うつ病を治すための個人的方法

個人的経験からうつ病の効果的な治し方について解説していく。

禁欲について

前回までの記事で、睡眠と食事の改善法について述べた。この二つの健康に対する根本的な基盤が正され、身体が本来の治癒力を取り戻していくに従って、過度な落ち込みや不安などと言った精神的な症状も徐々に緩和されていくことだろう。しかし、もう一点人間の健康の基盤を作る上で避けては通れない要素がある。すなわち人間の三大欲求の最後の残りである性欲のことだ。

 

性欲もまた人間にとって普遍のものであり、強い興奮や快楽をもたらし依存性も高いことから、資本主義社会では都合のよい商品として消費されている。特にこの日本ではそうだ。私達が簡単に手の届く範囲にどれだけ性的な消費財が溢れているかを数えてみるとよい。コンビニエンスストアでは子供の目に触れる場所に堂々と成人向け雑誌が並べられ、インターネット上では誰もがごく簡単にあらゆる種類の成人向け動画を視聴する環境が整っている。そして、性欲を過度に煽り立てることが、さも活力と健康の象徴であるかのように我々は刷り込まれて、特に男性は思春期を過ぎる頃から自慰に中毒してしまっている場合も多いであろう。

 

しかし、過度の性的な行為は完全に自然に反するものである。野生動物は基本的に限られた時期にしか発情せず、それ以外の期間は一切性的な行為を行わない。より原初的な生物ともなると、性行為を行った後に死んでしまうものも少なくない。射精をした場合に、得も言われない虚脱感や虚無感に襲われるというのは、男性ならば誰しもが経験のあることであろう。性行為というのは本来次の世代に生命を繋ぐために行われるものである。そのためには、性行為をするたびに個体の生命を削り取っているのだということをよく覚えておいてほしい。

 

ならば、みだりに射精によって生命の活力を浪費せず、その力を蓄積し自らのために利用したらどうなるのだろうか。世界中のありとあらゆる宗教では必ずと言っていいほど禁欲の美徳を説くが、中でもインドを起源とする仏教やヒンドゥー教は特に禁欲をことさらに重視し、独自の理論体系を構築している。射精をしないこと、性的な行為を行わないことは、サンスクリット語で「ブラフマチャリア(梵行、ブラフマンに至る行為)」と呼ばれる。これはただ単に社会的な道徳観から言われることなどではなく、生命エネルギーを蓄積し昇華させることで、より高次の能力を開発し、やがては悟りに至ろうとする実践的な方法論なのである。

 

翻って日本でも十年ほど前から、ネット上で俗に「オナ禁」と呼ばれるものの効果が注目されてきた。多分初出はナポレオン・ヒルの勇名な自己啓発本「思考は現実化する」であろう。

そこで流布される効果は驚異的である。自慰を一切行わないだけで日々活力に満ち、早起きも苦にならず、肌が若返り、目つきが良くなり、頭脳の回転が早くなり、そしてなによりも異性にモテるというのである。理屈としては良性の男性ホルモンであるテストステロンが活性化することで、男性の肯定的側面である意欲や行動力が増すというものだ。

pcmax.jp

 他の多くの自己啓発系の情報と同じように、衆目を引くためにかなり誇張している感は否めないが、かと言って、こうしたところに書かれていることが全く嘘であるとは思わない。人によって効果はまちまちであろうが、禁欲をすることで活力や能力面でかなりの改善が見られることは間違いないだろう。

 

気力や体力が落ち込み、何をする意欲を持つこともできなくなってしまっているうつ病患者にとっては禁欲はただ「何もしない」という選択肢を取ることで、状況を改善することができる非常に優れた手段であると言える。そしてさらに、禁欲は後に紹介するヨーガや瞑想を行っていくに当たっては基盤となる技術であり、それなしでは進歩を望むことが難しくなってしまうので、できるかぎり実践していくべきである。

 

今までそのようなことを気にかけてこなかった人は、まず一週間ほど試してみて、その効果の程を実感してみてはいかがだろうか。