うつ病を治すための個人的方法

個人的経験からうつ病の効果的な治し方について解説していく。

睡眠の改善について2

それでは今回は具体的な睡眠の改善法について述べていくことにする。前回の記事で書いたとおり、うつ病患者の体内時計は慢性的に狂った状態にあり、それをいかにして正常なものにしていくのかがこの方法論の要となる。

 

一度身についてしまった生活習慣を変えていくのには、一朝一夕ではいかない部分がある。読者の方々は決して一日や二日の短期的な結果を追い求めることなく、毎日少しずつでも生活を向上させていけるように、着実な実践を重ねていくことを心がけてほしい。たとえば今日、昨日より3分間早く眠れることに成功したならば、20日で1時間、3ヶ月では4時間以上も睡眠時間を改善することができるのだ。苦しみの中にいる時こそ人は焦り、そこから逃れようと急激な変化を求めたがるものであるが、今日の変化は今日自分ができる範囲でしか手に入らない。無理をせず、たとえどのような些細なものであっても、僅かな進歩に対して自分を褒めてあげながら、一歩一歩前に進んでもらいたいと思う。

 

さて、うつ病の異常な睡眠習慣を正常に戻すための、具体的方策の概要は以下の通りである。

 

・起きたらすぐ積極的に太陽の光に当たる。

・できる限り早い時間帯に屋外で体を動かす。

・夜は明かりを落とし、眠りたい時間には完全な暗闇にする。

必須アミノ酸、ビタミン、ミネラルなど栄養価のバランスの取れた食事を規則正しく食べる。

・アルコール、ニコチン、カフェインなどの嗜好品を止めていく。

・パソコンやスマートフォンなどの電子機器の設定を切り替えると同時に、使用を控えるようにする。

・ヨーガ、瞑想などによって体調を整え、心理的な障害を取り除いていく。

・睡眠にまつわる薬草類を用いることで、上記の方法を補完する。

 

以上の方法は前の記事で書いたように、人間の脳の機能を根本から狂わせる精神科の薬剤をきちんと断薬したあとで実践するのが望ましいが、まだ完全断薬に至らないまでも正しい知識の元に長期間少しずつでも実践を重ねることによって、複合的に症状の改善が見られるだろう。

 

現在うつ病に耐えながらも学校に行ったり仕事をしている方々は、規則的な社会生活を送っているという点では、相当な優位があるため、上記の方法をうまく取り入れていけば比較的早くに効果が出るであろう。しかし、わたしはここではより重症的なうつ病患者で家から出ることもできず、完全に昼夜逆転の生活を送っている場合も取り上げてみたい。最悪の事例に対する有効策を記述できれば、それより軽度な事例に対しても同様に解決を示せるのだ。

 

・起きたら積極的に太陽の光に当たる。

 

自然界で一日の朝、昼、夜の循環を決定づけるのはもちろん太陽の動きであり、人間を始めとする多くの生物もまた、太陽の光によって一日の活動を制御している。正常な体内時計が働いているならば、朝の目覚めとともに体を活動へ導く交感神経が活発となり、夕方から夜にかけては副交感神経が活発となり体は休息へ向かう。

 

うつ病患者の場合慢性的なストレスによってこの機能が崩れている。うつ病患者がよく経験するのは、自分では眠りたいと思っているのに、布団に入っても何時間も寝付けないというものである。慢性的に続くこのような状態は、経験したことがある人間でないとわからないほどに非常に苦しい。自分の意志ではどうにもならない問題だからである。しかし、目の前の不眠に対する眠ろうという意志は無力でも、よく眠るために一日の生活習慣全体を見直していこうという意志は遥かに現実的な効果があるものである。

 

朝起きた直後に太陽の光に当たることで、崩れた体内の朝と夜の循環を正しく書き直していくことができる。太陽の光を規則正しく浴びることは、うつ病患者の崩れた体内時計を回復させるための最も有効にして、最も費用のかからない方法なのである。

 

さらに詳しくは後で別の記事で書くが、例の「モノアミン仮設」で有名なセロトニンは、太陽の光によって賦活されることが確認されている。セロトニンが睡眠を司るメラトニン代謝されることは以前の記事で述べた。このように脳内化学物質という現代医学的な視点から見たとしても、この方法論は十分妥当であることがわかると思う。

 

しかしここで問題がある。現状ひどい昼夜逆転を起こしている場合、日の出前後で眠り、日没前後に起きるという生活も往々にして考えられる。一日のうちで太陽の光に当たれる時間が非常に少ないか、あるいは全く無い場合も考えられるのだ。

 

この場合の対処には2通りある。すなわち、

 

1、自分が起きる時間を一日に数分でも早めるとともに、その時間に太陽が出ているならば即日光浴をする。それを毎日繰り返す。

2、わざと徹夜をして朝日を十分に浴び、その後もできる限り覚醒を維持する。

 

1の方法は順当な方法論であり、時間はかかるが、体に負荷をかけることなく、生活習慣を矯正していくことができる。

2の方法はより積極的であり、体力的には辛い面もあるが、比較的短期間で生活習慣を元に戻せる可能性がある。昼夜逆転がひどいほど、この2つ目の方法のほうが効果的になるかもしれない。

 

個人の状況や意欲、体力の程度によって好きな方を選べばよいが、どちらを選ぶにしても、以下に説明する食事や運動その他の生活習慣の規則は出来得る限り守らないと効果は薄い。

 

・できる限り早い時間帯に屋外で体を動かす。

交感神経優位と副交感神経優位の移り変わりによる朝、昼、夜の推移を決定づけるもう一つの要因は、肉体的な活動である。人間は日の光が当たっているうちに食料採取などの仕事を行い、夜は活動を停止して眠るという自然の生物としての生理を持っている。よって、多少無理をしてでもなるべく早い時間に屋外に出て体を活動させることは、崩れた体内時計をもとに戻すのに非常に有効なのである。

 

運動の場合もまた自分の現在の状況に応じて、起床の直後のできる限り早い時間帯で行うか、それとも昼夜逆転がひどい場合には、いっそ夜を明かしてしまって日が昇り始めてから行うという、2つの手段が考えられる。

 

では、運動とは一体何をすればよいのか。一般に運動という言葉からはランニングや筋力トレーニングなどの激しい活動を想像されるかもしれない。しかし、過度に肉体に負担をかけることは、健康を取り戻すためには返って害悪となってしまうことも多い。

 

ここでもっともおすすめするのはただ歩くことである。余計な技術など全く必要ない。高価な器具に無駄な出費をする必要もない。ただ自分が起きることのできる最も早い時間に、日の光を浴びながら普通に歩くだけでよい。時間にして30~40分ほどが適切だろう。これならばほとんどすべての人が実行できるであろう。また、後で別の記事にも書くが、この歩くという行為もまた、例の「セロトニン仮説」から見たとしても非常に理にかなった行為と言えるのである。

 

ただ歩くのに必要なものはあまりないが、靴だけは足を傷めないものを用意したほうが良い。アシックスやニューバランスなど有名メーカーの廉価品のランニングシューズなどがあれば最適だろう。

 

さて、長くなりそうなので、続きはまた次の記事に譲ろうと思う。