うつ病を治すための個人的方法

個人的経験からうつ病の効果的な治し方について解説していく。

思考の改善について2 暗示法について

前回の記事では物事の原因となる思考の重要性について述べた。しかし、思考とはその個人が今までの人生で積み重ねてきた習慣の上に成り立っているものであり、いきなり思考法を変えろと言われても、適切な方法論なしではなかなか難しい面もあると思う。日々の瞑想の実践を続けていれば、自然と良い方向に思考が向かうものだが、それとは別にもう一つ有効な方法がある。それが今回紹介する自己暗示法である。

 

催眠と瞑想は同じく変性意識状態を意図的に作り出すことによって、無意識に働きかけるものなのであるが、この自己暗示法は主に催眠の分野で多く用いられている。催眠術というのも胡散臭いものとして扱われてしまうきらいがあるが、実は非常に科学的かつ合理的に整備された方法論なのである。その効果は強力で、たとえば人参が嫌いで全く食べられないと言う人に、人参が甘いお菓子に感じられるように暗示を与えると、一切の嫌悪感もなく大量に人参食べてしまうということがごく当たり前のように起こってしまうのだ。もちろん他人の無意識を操るという催眠の手法は悪用されることも多々あり、マルチ商法やカルト宗教などの洗脳的手法は、しばしば社会的な問題として取り上げられることがある。

 

自己暗示とは、こうした暗示法の持つ力を自らに施すことによって、習慣化されている否定的な思考を書き換え、より自身にとって望ましい建設的な思考ができるように訓練をしていくことである。カルト宗教の洗脳などと違って、暗示を与えるのは自分自身なので他者の制御下に置かれる心配は皆無であり、適切に用いるならば安全性に関してはまったく問題がないと言える。自己暗示法を用いるにはいくつかの注意点があるので列挙しておこう。

 

・否定的な単語を使わない

否定的な単語はそのまま否定的な印象を潜在意識に刻み込む。暗示は常に肯定的な単語のみを用いるようにしなければならない。

 

・否定形を使わない

前項に続いて潜在意識は肯定形と否定形の区別ができず、単語の持つ印象をそのまま記憶してしまうとされる。なので例えば「緊張しない」という暗示を繰り返すと、緊張の暗示だけが増幅され逆効果となってしまう恐れがある。この場合、「自信に満ち溢れている」と言い換えるのが良いだろう。

 

・自分と他者の区別をしない

同様に潜在意識は自己と他者の区別もできないとされる。仏教で前業を積む際には自他不二の姿勢が大切だとされるのもここから来ているのだと思われる。例えば、「私は繁栄し満たされている」と言う暗示を与えた直後に、「むかつくあいつが不幸に見舞われる」と言う暗示を刻み込んでいるならば、効果は帳消しとなってしまう。この考え方は日常生活でも非常に重要で、自らの成功を願うならば他者への攻撃性や憎しみは徹底的に捨て去るべきである。さもなければ習慣的に刻み込まれた負の感情がやがて自分自身に牙を向くことだろう。

 

・より短く端的な文章を繰り返す

暗示を与える際には長く難解な文章は不要である。暗示文は短くわかりやすいものがより強力である。例えば中村天風氏のように毎夜鏡に向かって「お前は信念が強くなる」と言い続けるような簡便なものが良い。何なら「自信」「健康」「成功」など、自分で肯定的な印象を抱きやすい単語を繰り返すだけで良い。

 

・過程についてはあまり気にしない

普段の日常生活における論理的な思考を元にしていると、実現の筋道が具体的に見えないことに対しては、どうしても無理だとか不可能だとか言う考えが先に立ってしまいがちである。しかし、自己暗示においてはそのような実現の過程については余り考える必要はなく、ただ単純に肯定の言葉を繰り返しているだけでよい。以前の記事でも述べたように、思考はそれそのものが物事の原因となり、内的・外的双方の状況を作り出す。肯定的な思考を潜在意識に植え込んだら、結果はすべて神仏が巡らせてくれる縁に任せてしまうような心持ちでいるのが良い。縁(プラティーティヤ)とは元々原因から結果を生じさせるきっかけの事を言う。人間にできるのは原因を植えることだけで、結果をもたらす縁は、我々の力の範囲外にあるのだ。

 

・変性意識状態で行う

 論理的な思考が往々にして暗示の妨げになることから、より無意識に言語を直結できる変性意識状態に入ったあとで、暗示を行うのがより効果的である。催眠両方でも、まずは四肢の力を抜いたり呼吸に集中させたりする催眠誘導を入念に行うのはこの理屈からである。音声や専門の術士によって変性意識状態に導いてもらうのも一手だが、できれば自分で瞑想法を覚えてしまうのが安上がりで時間もかからないので良いだろう。まだ瞑想法にあまり熟達していないという人は、夜布団に着いた後、眠りにつくまでの間のまどろみを利用するというのもよい。この時間は誰でも意識と無意識のつながりが覚醒中よりも強くなっているのである。少々話は逸れるが、その故に眠る前にはできる限り否定的な考えは持たないようにしたほうが良い。無意識に無益な思考が刻み込まれ、好ましくない結果をもたらしてしまう危険性がある。

 

このようにして、毎日暗示法を用いながら少しずつ自分の望む結果を無意識に刻み込んでいくならば、いつか何かのきっかけによってそれが実現することを目の当たりにするであろう。普通の人々は思考が形のない現実に力を持たないものであると思いこんでいるが、それは大間違いなのである。思考の力は適切に用いれば大きな果報をもたらすことができる。逆に不適切に用いれば、どのような不幸をもたらすこともできてしまうのである。適切な瞑想法や暗示法によって、できる限り良い思考を持ち、悪い思考を捨て去るよう精進を重ねていくことが肝要である。

 

最後にこうした暗示法に興味がある方は、ミルトン・エリクソン心理療法についての著作やNLPなどについて調べてみると良いだろう。

 

 

 

 

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